呼吸法
合気道の鍛錬法に呼吸法という技があります。動きだけを見れば、腕を前に出して相手を押しているだけに見えます。佐々木先生が存命中に何度か研鑽会に参加させていただきましたが、記憶に残っている技が、その呼吸法です。呼吸法を実際に受けた感覚は単に後ろに押される感覚とは異なります。
私が呼吸法を受けた時の感覚を可能な限り文章で表現してみようと思います。
1:腕の太さ
まず動きの詳細を説明する前に、腕を握った時の印象から記します。当時で70歳半ばだったと思いますが、何よりも腕が太い!私の手は決して小さくはありませんが、呼吸法で、手首を持った際、手首に指が回りきらなかったのを覚えています。ごついゴムの固まりを握っているような感覚。ゴムと言っても柔らかくはない、かといって硬くはない、全ての力を吸収してしまうような硬ゴムです。そのゴムの内側に、鍛えられた鉄の棒が通っているような感触でした。
2:腕の動き
次に実際の受けた呼吸法の動きを説明します。動きを説明する上で、印象的だったのは、腕全体の動きと手首の動きです。
腕全体の動きとしては、準備体操でも行っていた基本の動きの通り、臍から出て、臍に還るという動きそのものの印象でした。引くでも押すでもなく、ただ腕を臍から前方に伸ばしているだけだったと思います。呼吸法を受けている状態を客観的に外からイメージすると、私の両脇は綺麗に左右に拡げられていたと想像します。そして私の腰から上の上半身は、浮かされていたと思います。
次に、手首の動きについて説明します。先ほど、佐々木先生の腕を鉄の棒が通ったゴムと表現しました。表面の皮膚と筋肉がゴムで骨が鉄とすると、一体化して動いているのではなく、別々の動きをしているように感じました。手首を握った私の手で感じた印象としては、上を向いていた手のひらが手首を返すことで、その力がダイレクトに私の手に伝わるのではなく、手首の表面のゴムが動きその後に鉄の芯からの力が加えられたように感じました。とにかく一度に力が伝わるのではなく、段階的に力が伝えられたように感じました。だから反応できなかったのではないかと考えています。
以上が、佐々木先生の呼吸法を受けた時の感想です。今の自分はそのような身体と動きに近づいているのか、常に意識させられます。
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